久しぶりにお題箱を開いたら「好きな絵本!」というリクエストが来ていた。なかなかにかわいい文面とリクエストである。
絵本。わたしは本が好きであるが絵本というジャンルにはやや疎い。
今でこそ読書好きを公言し、美術館、博物館、喫茶店等に被れる文化好きモドキみたいな女になっているが小さい頃からそうだったわけではない。
幼少期は、ディズニープリンセスとおジャ魔女ドレミが大好きなニコちゃんマークのTシャツがよく似合う天真爛漫な幼児だった。大人しく本読んでるというよりは踊ってるか歌っているかしている子どもだった。当時おジャ魔女ドレミ変身セットやアクセサリーをねだった記憶はあるが絵本をねだった記憶はない。どこで道が分岐したのだろうか。
母は寝る前の読み聞かせを欠かさずしてくれたが本を読む人ではなかった。物心つく前は確か『しろくまちゃんのほっとけーき』、物心ついてからはグリム童話集、ディズニーのアニメ絵本、日本昔ばなしをローテーションして読み聞かせられていた。
グリム童話やメルヘンモチーフのもの、怪談は今でも好きだから幼少期の影響は多少残っているのだろうと思う。しかしながら絵本のバリエーションは記憶に乏しい。
そんな中でも強く印象に残っているものが一つだけある。
作・絵 ガース・ウィリアムス 訳 松岡享子
表紙を見た瞬間の、絵の印象がとても記憶に残っている。
それまで読んでもらってきたどの絵本よりも描き込みが細かかった。ぼんやりとした輪郭は美しくて、日が差しているのであろう森の薄暗い明るさは都会に暮らすわたしにとっては新鮮だった。その中にいる2匹のうさぎの毛並みは平面で見ても柔らかそうだった。
小さいわたしはくろいうさぎが悲しそうな顔で「しろいうさぎとずっと一緒にいられますように」と願う理由はわからなかったが、しろいうさぎとくろいうさぎが一生一緒にいる選択をした姿、たった2匹で完結する物語が予想外にロマンチックで一瞬で好きになってしまった。
ぼんやりとした輪郭と、ロマンチックで幸福な結末を見るために何度もページをめくった。自分から何度もくりかえし読んだ絵本はもしかするとこれだけかもしれない。大人になった今でも魅入られるように眺めていた記憶を思い出すと、少しだけ眩しくて胸がときめくような気がする。
『しろいうさぎとくろいうさぎ』は「結婚のプレゼントにも選ばれる」らしい。この絵本がある新婚家庭はきっと幸せな空気で満ちている美しい家なのだろうなと思う。
まれに友だちと絵本の話をすることがある。
本が好きなのに絵本の話だけはあまり出来ないのが実は少しだけ悔しい。今度こっそり図書館で絵本をめくろうかしら。ちょっと恥ずかしいかな。