野菜

行った場所の記録

店舗異動ハ短調

9月某日、息を潜めながら勤め先の入館ゲートをくぐった。

時刻は朝8時。今日のわたしの出勤時刻は11時半。おおよそ3時間半前出勤。

ちなみに早番のシフト開始時刻は9時半。やましいことがなきゃこんな早い時間に出勤しない。

勤め先は大型ショッピングモールなので入館口の周りに人の出入りはあるものの、勤めている店舗のあるエリアはオープン時刻10時なので従業員も全然いないし中も暗い。

唯一GAPの電気だけついていて引いた。早過ぎる出勤が。GAPの明かりを横目に挙動不審にならぬよう気をつけながら抜き足差し足でお店に向かった。

 

話は昨日に戻る。

お客様へ送る商品の梱包をしていると店長会に出かけていた店長から店舗に電話が入った。

店長会は売り上げについてと来期の異動が通達される。売り上げも大事だけれど平社員にとっては異動の方が大事だ。

弊社の異動は事前の打診が全くなく、全店通達がされてはじめて本人の知るところになる。自然災害みたいなシステムだ。

本当は全店通達まで言ってはいけないけれど、うちの店長は爆速でバラすタイプ。わたしは来月から異動になった。

異動先は元いた店舗。新しいことは何もないけれども嬉しい。この一年半、技術不足だと上から叩かれまくっていたのが辛すぎたのでスキップして帰った。

電車に乗って家に着き早速ビールを開けた。

「晴れ風」と書かれたキリンビール。気持ちにもピッタリな名前だった。

圧力筋肉タイプの店長、粘着タイプの教育担当、気が短い副店長と常にどこか怯えて働いていた日々に終止符が打たれる本当に嬉しい。実力がメキメキついた(主観)とは思うが日々愚痴と胃痛が止まらぬ日々であった。

ビールがうまい。彼氏が作り置いたパスタもうまい。

ビールをひと缶開けて景気良く2缶目に手を出したところでふと思い出した。

 

わたし梱包した荷物の伝票どうしたっけ?

 

店長から電話が入った時にわたしは荷物の梱包をしていた。荷物の中身は、お客さんの持ちこみの品物を壊してしまい急ぎで修理したものだった。そのため配送も最短の日付指定をしなければならなかった。

日付指定をした記憶がない。

とりあえず2缶目のビールを冷蔵庫に戻した。

古畑任三郎のポーズをとりながら1DKの部屋をぐるぐる回りはじめた。

 

シンキングタイムが終わり導き出した結論は、おそらく日付指定をしていない、ということだだった。

 

そこからはひたすらクロネコヤマトの配送指定について2時間ほどネット検索をした。得られた情報は伝票番号がわからなければどうにもならないということだった。

明日は遅番、荷物が間に合わなかった場合クレームになる可能性が高い。早番の先輩に気がつかれた場合、確実に物凄く怒られるに違いない。

この二つを回避するにはできるだけ早く荷物の日付指定を行うこと、先輩よりも早く出勤をして日付指定をすることが必要となる。

早朝にバレないように出勤するしかない。

かくして異動が決まった翌日にこの1年半の間で最も早く出勤することとなった。

 

店舗にたどり着き、閉められているシャッターを開けた。

うちの店舗、防犯カメラとかセコムとかなくて本当に良かった。

暗い店内を進み配送伝票をまとめている戸棚を開けた。

おそるおそる伝票を確認するとそこには最短の日付指定が書かれていた。

天を仰ぎ仏に南無阿弥陀仏を唱えてキリストに十字を切った。

日付指定の字はわたしの字ではなかった。職場の中で1番優しいベテラン社員の先輩の綺麗な字だった。

おそらく、わたしのうっかりに気がついたその人が書いてくれていたのだろう。

ベテラン社員の先輩にも心の底から感謝の祈りを捧げた。

それから3回伝票を確認したけれど3回とも日付指定はしっかりされていた。

安堵したわたしは自分のいた形跡を消して店舗のシャッターを閉めた。

 

出勤までおそろしく時間があるため再びスキップして近所にあるトーホーシネマズに向かった。

出勤前にルックバックを観て号泣した。

 

異動してから1ヶ月が経った。

環境があまりに温かくて日々に感謝をしている。

 

2023年総決算

はてなブログ、まる一年足を踏み入れていなかった。

昨年末のブログを読み返したら社内試験がすべて終わった開放感に満ち溢れていた。あなたはその3ヶ月後に突然の異動になり社会人生活で1番病みます。

 

今年は変化の一年だったと思う。

私生活ではこれまであまり話したことがなかった人や、遊びに行く機会が少なかった友人たちと過ごす機会に恵まれた1年だった。

今年関わった人たちは芯のしっかりした人が多かったような気がする。そんな人たちと会うたびに、わたしも自分のことをしっかり肯定して生きていきたいと思った。

彼女たちの人生に幸在らんことを。

大人になって以前より自分に自信が持てるようになって、相手の良いところとか素敵なところを素直に言えるようになった気がする。良い傾向だと思う。多分。

 

仕事は初めて異動を経験して環境の変化で体調を崩しかけたこともあった。健康優良児なので全然持ち堪えてしまった。しんどかった。

自分の悪いところを真っ直ぐに指摘されることが多くて本当にしんどかった。

最近は怒られることも減ったけれど厳しい環境を跳ね返して成長できるタイプでもないから今でも普通にしんどい。

異動希望を出します。

 

つらつら書いたけれど一番の変化は実家を出たことだった。交際7年目にして彼氏と同棲をはじめた。

今わたしは江戸川区民ではありません。

家族から離れて暮らしたことがなかったから不安もあったけれど楽しく思ったよりもちゃんと生活をしている。

彼氏との生活は穏やかで楽しい。彼氏が作るご飯も美味しい。体重は増えていてかなりやばい。

朝目が覚めた時にとなりに彼氏が寝ているのを見る時にしみじみと幸せを感じる。

朝が遅い彼氏はわたしが爆音で鳴らす目覚まし時計に毎朝起こされてもぞもぞしているけれども。

どうか彼氏も今の生活が幸せであって欲しいと思う。

 

今年は楽しかったけれどちょっと忙しくもあったから来年は心穏やかに過ごしたい。

それでは良いお年を。友人各位また来年も仲良くしてね。

 

 

 

 

 

 

年忘れ2022

12月29日。就職してから3回目の仕事納めをした。

セールも終わり休み前というのもあり、職場の空気は少し気が抜けていて穏やかな納め日だった。

今年は仕事をとても頑張ったと思う。

職場の先輩たちからは今が1番の踏ん張り時だよと言われ、社内の実技試験に合格するために朝練に励み、教育担当への鬱憤をTwitterに吐き出して、腹を若干壊しかけながら3つの実技試験に合格して昇進した。息絶え絶えである。

それでも試験は受かってしまえばこっちのもので合格後は職場のプレッシャーから解放されて穏やかに過ごしていた。

 

平凡な会社勤め仕事をこなしているうちに夏が過ぎ秋が過ぎ12月になった。口座に数十万(詳細な金額は伏せる)が振り込まれる。賞与!いわゆるボーナス。素晴らしきかな人生。この日のために日々働いていると言っても過言ではない。

給与明細を抱きしめて、今年は振り込まれたその日に奨学金の一括返済手続きをした。

 

ボーナス、指折り数えて待ちわびていたのにお別れはあっという間だった。げっそりと減った預金残高が悲しい。本当はデパコス買ったり旅行に行ったりしたかった。

 

払い終えられたのは良いことではある。胸は張ろうと思う。それにローンを抱えても大学に行けたのは幸福なことだった。

進学できないと思ったこともあったし進路を決めるときに揉めたりもしたけれど結果的には進学したいと思ったところに入れて学生生活の中で1番楽しい時間だった。

好きな勉強をできたことも、出会った人たちと卒業後も交流を持てていることも人生の糧になっている。

 

来年はボーナスを自分磨きや旅行に使いたいと思う。根が貧乏性だからそんなに思い切れないかもしれないけれど。

今年もあと少しで終わる。来年も穏やかで幸福であってほしい。

 

 

2021年度末

3月31日だ。今年度も最後を迎えてしまった。

社会人生活が明日から3年目に突入する。本当???全然仕事できないが。

年明けから2月までは社内試験があったりコロナの感染者数を鑑みて友人と会うのを控えたりと暗黒期を過ごしていたが、3月に入ってからは試験も終わってワクチン接種を終えたことで友人と遊びなかなか楽しい日々を過ごしていた。

さて締めくくりだ!というタイミングで胃腸炎にかかって今ゲロゲロ吐き戻しながら文章を書いている。こういうところがわたしはいつも詰めが甘い。

ひさびさに連休を過ごしているので今年一年やったことや起こったことを振り返ろうと思う。

 

①短歌に触れた

ご縁があって短歌結社に参加させてもらった。

趣味に関してはこれが1番大きなことかもしれない。俳句短歌に対して学生時代ちょっと苦手意識があったのでちゃんと向き合う機会ができたのは本当に良かった。他人の感性に触れるのは学びになるし感想をもらえるのも嬉しかった。

創作したり文章書いたり、久しぶりにするとやっぱり楽しい。

 

②着物着て出かけた。

落研4年やってた割に着物ひとりじゃ着れなかったので大躍進だった。

おばあちゃんや人から譲り受けた着物ばかり着ていたので自分で選んだ着物を着て出かけたのも新しい楽しさだった。

一緒に出掛けた友人が多趣味な人なので自分が知らない場所にいっぱい連れて行ってもらった。

 

③ジャンクヘッドにハマった

映像コンテンツにハマることが少ない人生だったのでテンションが上がった。

ディストピアにとにかく弱く得体の知れない生物(得体の知れない何かまでいくと苦手)が好きなので好みドストライクだった。

キャラクターのグッズ買ったのもすごい久しぶりだった。続編も観られるといいな…。

https://gaga.ne.jp/junkhead/

 

④インド映画大祭に行った

インド映画は好きだけれど時間が長くて家だとなかなか観る気が起こりにくいので個人的に本当にありがたい催し。今年は噂の『ヴィクラムとヴェーダー』観れたし見そびれて後悔していた『最終ラウンド』も観たのでよかった。

序盤に観た『3』はインド映画とシリアスの化学反応を見た気がする。今年も行きます。

 

⑤映画感想会

映画の感想を定期的に言い合う会が発足した。

感想がぶつかることもあるけれどいろんな見方を聞けたり観る機会が無かったであろう映画をたくさん観れた。

何より、定期的に人に会うきっかけにも繋がる会なのでありがたい。

 

⑥M -1観た

4年間落研やってたくせにお笑い全然見ない人間だったので今更お笑い面白いとなっている。遅い。最近までオズワルドと錦鯉の漫才の動画観てた。

 

美術館や博物館はこんなご時世でもコンスタントに行けていたので楽しかったし良かった。日本酒もたらふく飲んだ。

仕事は一年目より辛かったけどここが正念場だと分かっているので頑張れるかな…。

近しい友人とは変わらず仲良くさせてもらったり、落研の人たちは卒業してからの方が案外遊んだりしているかも。新しい交友関係もちょっとできて嬉しかった。

彼氏とはお互い生活環境がガラッと変わっても変わらず仲良く付き合えているのでありがたい限りだ。

来年度はパーティーとかしたい。

 

 

 

クリスマス2021

先日少し早めに彼氏と5回目のクリスマスデートをした。彼氏とのイベントは日記のように書き残しておきたいという気持ちとせっかく文章を書くなら読まれたいという自己顕示欲がある。

 

例年よりもあっさりしたクリスマスだった。もはや暦ではまだクリスマスを迎えていない。

今年は彼氏が多忙な仕事に転職(転職?)してスケジュールが立てにくくなったために遠出の予定は特に立てなかった。その代わりに普段は行かないような少しいいレストランのディナーを食べに行こうという話になっていた。

 

待ち合わせの時間、彼氏の仕事が押した上に反対方向の電車に乗ってしまったという連絡が来たので(うっかりさん…)と思いながら時間を潰した。昨年まではわたしの予定に合わせてもらうことの方が多かったけれど彼氏が今の仕事をはじめてからはわたしが合わせることが増えた。

19時を過ぎたくらいに彼と合流する。マップアプリを開いた携帯電話を彼に渡した。わたしよりも彼の方が方向感覚が優れているのでそれに甘えてしまうところがある。

仕事のことや今週あった出来事を話しながら彼に手を引かれつつレストランに向かった。

 

駅から少し離れたところにレストランはあった。天井が高いおしゃれで温かみのあるお店だった。

わたしは赤ワイン、彼はビールを頼んだ。

運ばれてきた赤ワインは大きめのワイングラスにものすごくお洒落な量で来た。

「金額がサイゼリヤの8倍。」「口までワインがたどりつかない。」等好き勝手なことを言いながらワインを楽しんだ。失礼である。

彼に味の違いわかる?と聞かれて本当は全然分からなかったけれど指先でちょっとだけ。と答えた。

お洒落で美味しい料理を楽しんでいるとお店の電気が急に消えた。テンポの良い音楽が流れ店中の人がみな手拍子を打ちはじめた。

「おめでとうございまーす!」

店員さんが花火付きのケーキを持ってくる。

隣の席のバースデーサプライズだ。

店内にいる人たちが皆なんとなく手拍子に乗っている。わたしもなんとなく手拍子をした。彼の顔を見ると苦虫を10匹くらい噛み潰したような顔をしている。前世でサプライズに村を焼かれた人の顔だ。笑ってしまった。

そんなにサプライズ嫌いだったっけ?と訊くとまわりを巻き込んでするサプライズが嫌だと彼が答えた。仲間内で完結するサプライズはいいらしい。

ワインと料理をそれなりに飲んで食べて、レストランを出た。首にはラルフローレンのマフラーを2人とも巻いていた。今年のクリスマスプレゼントだ。

サプライズプレゼントの失敗が怖いのでプレゼントは一緒に買いに行く。今年はお互い欲しいものがマフラーだった。

同じブランドの同じ形、同じ値段のマフラーを選んだのでプレゼントにする意味を見失いかけたりした。レジまではお互い選んだものを持っていってお会計を済ませてから商品をトレードした。

 

レストランについてなんだかんだ言いながら彼氏の家に向かった。もしかするとちょっと良いレストランは我々にはまだ早かったのかもしれない。それか大衆居酒屋がお互い性にあってるのかもしれない。わたしはクリスマスに大衆居酒屋だと少しすねてしまうけれども。

彼が一人暮らしをする家について、事前に買っておいたケーキを食べた。4年の付き合いで一口交換やシェアが当たり前になっている。

 

今年も良い一年だったし、なんだかんだでクリスマス(当日じゃなかったけれど)も一緒に過ごしている。来年も穏やかに過ごしたいよ。

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はじめてのカラコン

カラーコンタクトレンズ、略称カラコンである。

どちらかというと垢抜けていない部類の人間なのでカラコンとは縁のない人生を歩んできた。

噂では目が大きくなると聞いた。色がつくとも聞いていた。興味は正直あったけれど手を出す理由と勢いがなかった。

ちなみに、コンタクト自体との付き合いは長い。ハウスダストアレルギーと花粉症のために朝起きると目やにでまぶたがくっついてしまうようになってからはとんとご無沙汰ではあるのだが。

最近は仕事柄もあってコンタクトはほぼ付けずもっぱら眼鏡で過ごしているのだけれど、ふとした縁あってカラコンを着用する機会を得た。

なんかこう、劇的に自分が変わる予測に支配されてだいぶテンションは上がっていた。これつけるだけで激垢抜けドール系人間になるのでは?とすら思った。舐めすぎである。

結構どきどきしながら休日に気合いをいれてつけた以下は反省文である。

 

①メイク薄づき問題

よーしアイメイクごりごりにするぞー!!!

と思いピンクのアイシャドウ、グリッター、アイライナー、マスカラを普段より濃いめに装備したもののメイクの劇的変化は得られない結果となった。悲しいかな奥二重なのでアイシャドウを塗った3分の2はまぶたの奥に吸い込まれていく。あと自分では濃いめにつけているつもりでも実際は薄づきなっている気もする。アイメイク、料理の味付けに困っているときの心証に似ている。作る料理だいたい味が薄い。

まつ毛との距離感がわからずに、というかまつ毛を盛ることを恐れてマスカラは自然に伸びるデジャビュのラッシュアップ使っているのだがまつ毛ってボリュームアップするべきなのだろうか。

 

②彫り足らぬ顔

愛知県産純日本人、祖母の代から鼻低い、頬骨高め、顔丸めヨウチェケラッチョ!

という感じなので目の周りだけ浮いた。

黒や茶のナチュラル系のカラーなら問題はないのだがブルーやピンク系の発色が良いものだと目のパンチにその他パーツが全部負けて目から下が妙にのっぺりしているように見えた。

日々せっせとシェーディングとハイライトを塗ってはいるのだけれど、この二つだけではわたしの顔に濃い陰影はできない。レンブラントに学ぶべきか。

 

③巻きとれる髪

カラコンには巻き髪っしょ!と安易に思い髪を巻いたら雨季の湿度100%に負けて家を出た瞬間に髪の毛が全部萎れてしまった。ケープ惨敗である。

ショートに飽きて今髪を伸ばしているので巻き髪は習得したい技術ではある。ケープじゃなくてワックスの方がもち良いのか?

 

個人的な反省点は「色」「彫」「巻」であるけれど、世の中の人はカラコンをつけるときやメイクの濃さとどう向き合っているのだろうか。

今机の上に高発色のカラコンがあと4セット転がっている。

 

童話とうさぎと幼少期

久しぶりにお題箱を開いたら「好きな絵本!」というリクエストが来ていた。なかなかにかわいい文面とリクエストである。

 

絵本。わたしは本が好きであるが絵本というジャンルにはやや疎い。

今でこそ読書好きを公言し、美術館、博物館、喫茶店等に被れる文化好きモドキみたいな女になっているが小さい頃からそうだったわけではない。

幼少期は、ディズニープリンセスおジャ魔女ドレミが大好きなニコちゃんマークのTシャツがよく似合う天真爛漫な幼児だった。大人しく本読んでるというよりは踊ってるか歌っているかしている子どもだった。当時おジャ魔女ドレミ変身セットやアクセサリーをねだった記憶はあるが絵本をねだった記憶はない。どこで道が分岐したのだろうか。

母は寝る前の読み聞かせを欠かさずしてくれたが本を読む人ではなかった。物心つく前は確か『しろくまちゃんのほっとけーき』、物心ついてからはグリム童話集、ディズニーのアニメ絵本、日本昔ばなしをローテーションして読み聞かせられていた。

グリム童話やメルヘンモチーフのもの、怪談は今でも好きだから幼少期の影響は多少残っているのだろうと思う。しかしながら絵本のバリエーションは記憶に乏しい。

そんな中でも強く印象に残っているものが一つだけある。

 

作・絵 ガース・ウィリアムス 訳 松岡享子

しろいうさぎとくろいうさぎ

 

表紙を見た瞬間の、絵の印象がとても記憶に残っている。

それまで読んでもらってきたどの絵本よりも描き込みが細かかった。ぼんやりとした輪郭は美しくて、日が差しているのであろう森の薄暗い明るさは都会に暮らすわたしにとっては新鮮だった。その中にいる2匹のうさぎの毛並みは平面で見ても柔らかそうだった。

小さいわたしはくろいうさぎが悲しそうな顔で「しろいうさぎとずっと一緒にいられますように」と願う理由はわからなかったが、しろいうさぎとくろいうさぎが一生一緒にいる選択をした姿、たった2匹で完結する物語が予想外にロマンチックで一瞬で好きになってしまった。

 

ぼんやりとした輪郭と、ロマンチックで幸福な結末を見るために何度もページをめくった。自分から何度もくりかえし読んだ絵本はもしかするとこれだけかもしれない。大人になった今でも魅入られるように眺めていた記憶を思い出すと、少しだけ眩しくて胸がときめくような気がする。

しろいうさぎとくろいうさぎ』は「結婚のプレゼントにも選ばれる」らしい。この絵本がある新婚家庭はきっと幸せな空気で満ちている美しい家なのだろうなと思う。

 

まれに友だちと絵本の話をすることがある。

本が好きなのに絵本の話だけはあまり出来ないのが実は少しだけ悔しい。今度こっそり図書館で絵本をめくろうかしら。ちょっと恥ずかしいかな。